喜屋武ちあきの新井素子風自己紹介が巻き起こした波紋(後編)
2013年4月28日に開催された「ニコニコ超会議2」の併催イベント「日本SF大会"超"体験版」の企画「きゃんちさん(喜屋武ちあき)の新井素子風自己紹介が巻き起こした波紋……」を文字起こししました。
http://www.sf50.jp/niconico/kikaku1/sc_c.html
えっと、そろそろ後編が始まります。
喜「今ってどれくらい、外出とかされるんですか?」
素「え、何?」
川「はは、外出?」
喜「だって聞いてると、ほんとに一日活字を読む事が幸せだと仰っていたので、外出される機会ってどれくらいあるのかなと思って」
素「外食はね、基本的にはですね、仕事があって帰れる時間に夕飯作れない時とか、パーティーその他でそもそも出たら食事だ、みたいのとか、あとは旦那とたまに外で食べるくらいですね」
喜「……外食。……外出は? 私が悪かった。大きな声で。あの『外出』」
素「『外出』。失礼しました。今『外食』って聞いて答えてました。何の事だと思った」
喜「すみません」
素「外出はですねえ、同じ」
喜「同じ。大体、分かりました」
素「ただね、外出は一日一回はするようにしてます。あの、単純にそろそろメタボ的に一日、まあ、四十分以上は歩きなさいという事で。家の周りを歩いて買い物をして帰ってきて、うちでご飯作ってます。外出って言うのかな?」
喜「言います言います」
素「夕飯の買い物って言うんじゃないかな?(笑)」
川「はははは」
喜「でも四十分は結構な外出です」
素「実はうち駅まで片道二十分なんで、駅行って帰ってくると四十分なんですけど」
喜「結構遠いんですね」
素「そうですね」
喜「でも良い運動になるというか」
素「でもこれは夕飯の買い物だよ。外出じゃないよ」
喜「凄い、喋ってる事が素ちゃんだよね。凄いなあ(笑)。このままやっぱ文体になってるんだなあ。自問自答が行われている感じが素ちゃんだなあ」
川「なんかさあ。素子さんの作品でよく違う世界の自分みたいな子が出てくるじゃない? ちょっと世代が違うけど二人並んでるって感じがするよね。親が編集者で、本いっぱいあって、って」
喜「全然、私は劣化版。劣化している版ですよ。進む道が今また違ったりとかするので。でも私も小説を書きたいって今でも思いますし、将来は文章を書いて家でいっぱい本を読んで生活したいっていう夢があって」
素「うん、あの、これ本当にひきこもりタイプの人には、あ、ひきこもってはないもんね。でもひきこもりには向いてます、作家って商売」
喜「川端さんはどうですか? 作家という商売は」
川「いや、楽しいですよ。でも、まあ、話はそこではなくて。えと、あれでしょ? 需要がある限りはグラビアアイドル、だよね?」
喜「あ、そう。私グラビアアイドルもやってるんですよ」
素「凄い!」
喜「ありがとうございます」
川「あの、みなさん『プレイボーイ』見ました?」(会場拍手)
喜「プレイボーイ、プレイボーイ」
川「ここだけ語らせて。あれ見て初めてアイドルのお父さんの気持ちが解りました。あれ見て、なんかエロじゃないのね。勿論ナイスバディなんですよ。でも、ああ、ああ娘よ、みたいな気持ちが初めて解った(笑)」
喜「お父さーん!」
川「なんか邪じゃない綺麗な川端みたいな」
喜「ありがとうございます。綺麗なジャイアンみたいな」
川「綺麗なグラビアでした」
喜「嬉しいです。確かに知ってる人だと余計に気まずいみたいなのもあると思うんですよ」
素「でもさ、写真を撮られるって結構大変な仕事ですよねえ」
喜「そうですね、グラビアはずっとお休みしていて。私その十年前にデビューしてから、もう五年くらいきちんとグラビアやってなかったんですよ。でも文章もそうなんですけど、自分というものをアウトプットしたいっていうのが自分の意識としてあって」
素「気持ち、演劇に近いのかなあ」
喜「そうですね。近いかもしれない。グラビアをやる為に、表現したいものがそこにあるので、ただ水着を着るとか、ただ露出度が高いという事ではなくて、作品を作るっていう意識です」
素「きゃんちってキャラクター作って見せるんだ、色んな」
喜「そうですね、そういう形に近いです。そういうのもあります。でも需要に、ニーズに合った、とかも考えるし」
素「そうだよねえ」
喜「作品を作る上では自分が書きたい事だけじゃなくて、その時のニーズに合わせたものっていうのは意識されたりしますか?」
素「あのね、物凄い我が儘だから自分の書きたい事しか書いてない」
喜「うんうん、そんな感じがします」
川「ははははは」
喜「違う、でも素ちゃんはそうじゃなきゃ駄目っていうか、素ちゃんが急に、ちょっと今、時代こういうのだからこういう事を書こうとか言ったら全然違う感じがしますね、それは。イメージじゃない」
素「まあ多分、出来ないだろうし、本当だって、そう、16かそこらの子供が自分のやりたい事やって、やってるだけで三十五年きちゃったんだから、もうこのまま我が儘を押し通すしかないよっていう」
喜「実際に16とかでデビューされたら、ずっと同じ環境がそこにある訳ですよね。小説を書いて、読んで、生活、それで食べていくっていう事をずっとやられている訳じゃないですか。ある意味変わらなくても……」
素「ほんとにねえ、ある意味代わり映えしない毎日で、23の私の生活と今の私の生活と、ほとんどやってる事は変わってないと思う」
喜「でも、完成形が既に16とか23の時にあったって事じゃないですか。自分の人生の中でこれがやりたいって事がその時にFIXしてる訳ですよね。それは凄いと思うんですよ。私なんかもう、あれもやりたいこれもやりたいで、今。もう若いアイドルさんって訳じゃないのにもかかわらず、また新しい事をやってみたいとか、昨日とは違う事をやってみたいっていう意識が強いので」
素「それはあった方が良いかもしんない。私はあくまで本当に好きな事しかやんなかったんで、私の今までの人生とっても幸せだったと思うんだけど、他の事に手を伸ばした方がもっと違うお話も書けたかもしんないし、社会経験の少なさっていうのが凄く思います。今になって」
喜「会社員として働いた事はないんですっけ?」
素「会社員だけじゃなくて、バイトすら一回しかやった事ないのよ」
喜「わあお」
素「だって高校までバイト禁止で、高校二年以降はバイトするより仕事した方がよっぽど金になったので(笑)」
喜「今、新しくやってみたい事ってなんですか? もし何でも出来るって言われたら、バイトでも何でもいいし、趣味でも何でもいいけど、新たに何か始めたい事っていうか」
素「うーん。あのー。そうだなあ。もう少し体力がある頃に一回ちゃんと運動部に入って体鍛えるってやってみても面白かったかもしんない」
喜「運動は何がいいですか?」
素「……(無言)」
川「はははははは」
素「あの……」
喜「運動というものに対して素ちゃんが物凄い疎いという事が判る」
素「一時期、泳ぐのが結構好きだったんですよ。ある程度泳げた時は。でも、それでも今から七、八年前に一回泳いでみたら、もう全然駄目で、体が忘れてて。昔はそれでもね、少なくても五十メートルくらい泳げた筈なのに、今十メートルくらいで息が上がって立ってしまう私って何? って」
喜「はい」
素「基礎体力の低下ってもんじゃないものが起こっている。私の体の中で」
喜「自分もやっぱり運動を常にしないと駄目だなって思っていて。ライブとかで二時間三時間歌って踊ったりするんですよ」
素「何やってるんですか? 基礎体力作り」
喜「ええと、走ったりとかジムにも通ったりとか」
素「偉い」
喜「やっぱり体力勝負の仕事なので。風邪引いて自分が仕事に行けなかったら、もう終わっちゃう事なので。プロとして失格と言われちゃうレベルじゃないですか」
素「それはだから歌手さんとか俳優さんとかその類いの、何て言うんだろう、自分のままが出ないといけない仕事の方、本当にそういう意味で大変だと思う」
喜「効率は良くないと思うんですよ、それって。だから、おうちにこもって仕事が出来たら将来的には良いなと思いますね」
素「こっちはね、少なくても37度までなら熱が出ても人に気付かれないもん。私がしんどいだけで」
喜「痩せ我慢出来るのはいくつまでなんだろうって思いますね」
素「そんなに素晴らしく遠い日じゃないからさあ、痩せ我慢利かなくなるのは」
喜「そうなんですよー」
川「人生の真実を語り掛け、宴もたけなわなの所なんですが、そろそろ締めに掛からなければ」
喜「えー。まだまだ、そんな時間は」
川「裏で続けて頂く事にして。変わらない新井素子という事で資料を持ってきてあります。これはあとがき……」
喜「あとがき!」
川「……の書き出し一覧っていうのを作った方がいらっしゃって、インターネットで公開されているんですけど。1980年7月。『いつか猫になる日まで』文庫。集英社コバルト文庫ですね。書き出し。『えっと、書き出しです』で、2012年8月。『くますけと一緒に』二次文庫なのかな。中公文庫。あとがき。『あとがきであります』で、これ延々と続けるんですよね、恐らく」
素「あのね、『あとがきであります』は、最近は大抵『あとがきであります』だね」
喜「なんでそっちになったんですか? 最初は『えっと、あとがきです』みたいな」
素「『えっと、あとがきです』をやってたら、結構あちこちで散々いじられて、いじられるのは別にいいんだけど、段々そうだな、さすがにね、35を超えた辺りで『えっと』はやめた方がいいかもしんない」
喜「あはは。そういう自分の中で……」
素「そっから『あとがきであります』にしたんですよ。これだったら60で『あとがきであります』っても何か文句あるか!」
喜「うんうん」
素「このまま行っちゃえという感じで」
喜「はいはい」
川「ではここで、ちょっとサプライズもあるんですけど、本当に事実上の締めとして、それぞれ『えっと、あとがき』……」
桜「…………」
川「やりますか?」
桜「ちょっと持ってきてもらっていいかな」
川「何か物々しくね、出てきました」
桜「ちょっと新井さんから渡して頂けたらいいな、と。新井さんから是非」
喜「何ですか?」
桜「ええと」
喜「え、何これ!」
桜「今日、新井さんと喜屋武ちあきさんがお会いしましたという証明書」
喜「凄ーい」
桜「立会人代表という事で川端さんのサインも頂いております」
喜「凄ーい」
桜「ちょっと新井さん読み上げてお渡しして頂いていいですか?」
素「はい。えー。証明書。喜屋武ちあき殿。あなたはニコニコ超会議2併催イベント日本SF大会"超"体験版内企画『きゃんちさん(喜屋武ちあき)の新井素子風自己紹介が巻き起こした波紋……』において、遂に私と出会った事を証明します」
喜「わあ。ありがとうございます」(会場拍手)
素「2013年4月28日、ニコニコ超会議2併催イベント日本SF大会"超"体験版にて。新井素子」
川「立会人。川端裕人」
喜「わあ、凄い。ありがとうございます」
川「じゃあ、きゃんち、あとがきコメントをどうぞ」
喜「もう終わりですかあ? 嫌だあ。やあ、凄い、あの、本当に何か申し訳ないですね。今回このニコニコ超会議っていう大きなイベント、私、インターネットが大好きで高校一年生の時からインターネットの住人として生きてきたんですよ。ニコニコ動画が生まれたベータの頃から会員で」
素「凄いねえ」
喜「はい。それがもう何年前だ? いっぱい前です。で、ニコニコ超会議というこのイベントは、何て言うかなあ、凄く神聖なイベントなんですよね。そこでSF大会という、その、凄く歴史のあって、自分の好きなものって元を辿れば全部SFだと思うんですよ。本当に。あの実際にはない事とか。小学校の時にいじめられたりとかしてて、本当にSFしか逃げ場がなかった時とかあって。妄想する事でしか自分っていうものを保てなかった時期があって。そういう時期に凄い素子さんに助けて頂いたので、本当に今日はなんか、私は一応タレントという立場でここにいますけれど、本当にただのいちファンとして今日、この日に感謝しています。本当にありがとうございました」
素「そんな事を言ってくれて、こちらこそ、どうもありがとうございました」
川「きゃんち、実は、まだ、あるんだ」
喜「もう充分ですよ(笑)」
川「受け取って下さい」
素「副賞だって。副賞って、そうなのかこれは」
喜「わあ!」
川「キャットテイル!」
喜「キャットテイル! いいんですか、ぬいさん!」
素「これはね」
川「どういう経緯?」
素「誰が手に入れてくれたの?」
桜「平井君どこにいるんだ? 平井君、うちのスタッフの平井の方が」
素「そうか。スタッフの方のお友達が持ってて、持ってた子か何かで、開けてない子なんだよね?」
桜「はい」
素「これ、キャットテイルって分かります? こちらの方、分かります?」
川「キャットテイルで検索して下さいね。ラリー・ニーヴン……」
素「ラリー・ニーヴンのSFに出てくる」
喜「はい。勿論」
素「それでね、このキャットテイル私が読者の方に頂いて、あんまり可愛かったんで自慢してて、遂に物好きな会社が量産してくれたんですよ。で、その量産品で」
喜「本当に? でも手に入らないですよ」
素「これがうちの子」
喜「こんにちは、ぬいさん。あの、素ちゃん、お鼻くっ付けたらいいですよ」
川「はははは。段々感極まってきたね」
素「この子がねえ、これの量産品バージョンの最初の子でリナちゃんっていうんですけど」
喜「はい、リナちゃん」
素「うち、こんだけいましたから(笑)」
喜「そうなんですよねえ」
素「いまだにいますから」
喜「凄い」
素「この子、柄が違うでしょう」
喜「本当だ。この子は?」
素「これが第一号のダナさん」
喜「ダナさん」
素「でもダナさんの顔は……。顔は……」
喜「どこに……」
素「私の……脇」
喜「ここですね」
素「この写真だと分かんないかなあ。いや、ごめん、縫い包みの紹介しても仕様がないよね(笑)」
喜「いやいや、素ちゃんといったらぬいさんだから。凄い、大事にします。ありがとうございます」
桜「じゃあ、あの、どんどん長くなると思いますんで、申し訳ございません、あとは楽屋で」
川「内側でね」
喜「いやあ、そんな。今日は素ちゃんのファンの方とかSFが大好きなみなさんが来て下さってると思うので、今日はこのような機会にありがとうございました。これからも、SFというものは、もっとたくさん若者にも……。SF大会って年齢が高い方も多い……」
桜「上がってます」
喜「ですよね」
桜「今回、SF大会の参加者の年齢を下げたいというのがありまして、超会議に参加しております」
喜「はい」
桜「きゃんちのファンの方、是非お願いします」
川「喜屋武ちあきが広島に来たら『こいこん』来るぞって人、どれくらいいますか?」
喜「ありがとうございます。嬉しい。あの、本当にSF大会っていうのは自分の原点でもあると思うので、出会うのはちょっと遅くなってしまいましたけれども、是非これから色々とよろしくお願い致します」
桜「よろしくお願いします」
喜「みなさん是非、広島の『こいこん』、そして来年は筑波で開催されますので、是非SF大会にも参加して下さい!」(会場拍手)
川「はははは」
喜「ありがとうございます」
川「お後がよろしいようで」
喜「まだいっぱい言いたいけど、多分、時間もこの辺で、という事なので。今日は本当にありがとうございました」
桜「ありがとうございました!」(会場拍手)
喜「写真を最後に撮って頂いてもいいですか、一緒に」
後編終了であります。
もしもご縁がありましたら、いつの日か、また、お目にかかりましょう――。